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マイメリブルー水彩絵具を試してみました

更新日:2022年8月3日


イタリアブランド「マイメリブルー(水彩絵具)」を期間限定にて、店頭でもお取り扱いを開始いたしました。(店頭取扱期間:2022年6月~2023年6月を予定) マイメリブルー水彩絵具は、どのような特徴があるのか、また他ブランドとはどんな違いがあるのか、スタッフも試してみました。

【目次】

1. マイメリブルーとは?

2. マイメリブルーの特徴

3. マイメリブルー以外ではなかなか見かけないレアピグメント色 4. 2020年度版人気10色を試してみた

5. メーカーオススメの「イントロセット」の特徴 6. 混色による分離色づくりに適した絵具? 7. まとめ




【1. マイメリブルー水彩絵具とは?】

~Made in Italy 画家が求める最高の絵具を~

第一次世界大戦後、原材料の不足から絵具メーカーの品質は著しく低下し、画家の望む高品質な絵具の提供は不安定なままでした。当時、一際色彩に情熱を持っていた画家のGianni Maimeri(1884~1951)はこの状況を打開するべく、自らの求める最高の絵具をその手で作り始めます。自身の絵画技術的側面と、弟・Carlo Maimeri(1886~1957)の科学的見地から描画に理想的な素材・材料を厳選し、それらが最もパフォーマンスを発揮できる処方で絵具作りを開始します。そうしてマイメリ社は、1923年に兄と弟の二人によって彼らの母国イタリアで生まれました。 (大日本美術工芸マイメリブルー資料より引用)

マイメリブルーの”マイメリ”は、ご兄弟の名前なんですね。 ちなみに、イギリスで生まれたブランド・WINSOR&NEWTONは、科学者のWilliam Winsorと、画家のHenry Newtonの二人で設立しています。 こちらは兄弟ではありませんが、科学者と画家のペアによる創業者の名前がブランド名になっている、という点で似ていますね。

画家の求める色、絵具を科学者が形にする。 マイメリブルーの絵具へのこだわりは、安価な人件費を求め海外に工場を映すのではなく、すべてMade in Italyでになっていることからも感じられますね。



【2. マイメリブルー水彩絵具の特徴】


●全90色が単一顔料 マイメリブルーの特徴はなんといっても、全90色すべてが単一顔料の絵具であるという点ではないかと思います。 単一顔料の絵具とは、絵具1色を作る為に使う顔料は1つであるということです。 単一顔料であることの何が良いのかというと、混色による色の濁りが少ないという点です。

例えば、赤と青の絵具を混ぜて紫色を作りたいと思った時、 1顔料の赤+1顔料の青=2顔料の紫になりますが、 2顔料の赤+3顔料の青=5顔料の紫ができます。 混色により顔料が増えるほどに、彩度の低い紫ができあがります。(赤っぽい紫、青っぽい紫という色味の差ではなくて、グレーっぽい紫)


スタッフは、学生時代に大容量の安いペンキで赤と青を混ぜて紫を作ろうとした時、いくら割合を変えても紫にはならず、ただただ大量のグレーができあがった…という苦い思い出があるのですが、今思えば、それはこういうことだったのだなと思います。(結局、紫のペンキを新しく買いました)

その点、マイメリブルーは全色が単一顔料なので、混色時の彩度の程度を自分である程度コントロールしやすいというのは、絵を描く側にとって嬉しい魅力だなと思います。

●顔料の本質を尊重した処方

顔料(色の元)は、鉱物や金属、土、石油など、いろいろな原材料からできています。伸びやすい色、伸びにくい色、重い色、軽い色、それぞれ性格が異なります。 マイメリブルーは、超微細な粒子サイズに加えて、顔料それぞれの性格に合わせて考え抜かれた顔料濃度と、それらに合わせて調整されたアラビアゴム溶液とで配合されているのだそうです。



”原材料の性格を活かす”という点をまさに表しているのかなと思った色が、

『No.296 グリーンアース』 PG23:ナチュラルアース(グラニュレーション性・無機顔料)


チューブから出した濃度そのままで塗っても、とても色が薄いので、他の色を塗った時のビビットな発色との違いに、一瞬違和感を覚えるほどでした。 でも、PG23の顔料の性質を活かしているからこそのこの薄さなのだろうと思います。薄いけれど弱いのではなくて、抜けるような透明感のある綺麗な青寄りのグリーンです。 他社の「グリーンアース」という名前の色と比べてみると、レンブラントは同じPG23の単一顔料ですが黄色寄りです。セヌリエはPBr7というブラウン系の顔料を使用していました。 同じ顔料なのに色が違うのは、絵具の製造過程が異なるからです。 同じ材料を使っても、火の強さなど調理の仕方で出来上がりが変わる料理のようなイメージでしょうか。 ●濃い色から薄い色まで、幅広い単色グラデーション

上の方の濃い色はもちろん、薄くにじんだ先の色も透明感があって綺麗ですね。 マイメリブルーは、1色におけるグラデーション幅がとても広いです。

使用した色:No.256 プライマリーレッドマジェンタ

薄い水色から濃い水色の広い色幅の中に、粒状感のある薄紫がアクセントに。 使用した色:No.359 ベルリンブルー、No.440 ウルトラマリンバイオレット、No.417 セルリアンスカイブルー

【3. マイメリブルー以外ではなかなか見かけないレアピグメント色】



マイメリブルーには、他ブランドではなかなか見かけない貴重な顔料を使用した色が存在します。その中でも特に気になるのは「インディゴ」でしょうか。  顔料のカラーインデックス名は、『種類+色相+番号』なので、例えばPG23は『Pigment+Green+23番』です。 ※番号は登録順(厳格ではない)。 マイメリブルーの『No.422 インディゴ』のカラーインデックス名はNB1 『NB1=Natural(天然原料)+Blue+1番』 つまり、古来から使われていた天然インディゴです。 藍染など天然インディゴの成分を含む植物を用いたものがある一方で、インディゴ染めなど扱いやすい合成染料を用いたものが主流になっている現代となっては、天然インディゴの絵具はとても珍しいですね。 NB1、Vat Blue1、PB66など「インディゴ顔料」を使用している色と、インディゴ顔料を用いらずに作っているインディゴ色など、インディゴを追及するだけで長くなりそうなので、絵具における「インディゴ」については、後日改めて研究部記事に上げようと思います。(油絵具とかアクリル絵具とかのインディゴも気になります) 【4. 2020年度版人気10色を試してみました】



スタッフも人気色10色を試してみました。

ターコイズコバルトやプライマリーシアン、プライマリーレッドマジェンタなど、塗った瞬間から楽しくなるような高発色の絵具に感動したり、「ドラゴンズブラッド」という名前にワクワクしたり、なるほど納得な10色でした。 ちなみに、プライマリーと名前の付く色は、マイメリブルーの三原色に該当する色とのことです。

5. メーカーオススメの「イントロセット」の特徴

マイメリブルーの特徴が実感できる5色セットとして、「マイメリブルー イントロセット」があります。 初見、何故この5色がオススメなのだろう?と思いました。三原色でもなく、基本色でもなく、レアピグメントだけでもなかったからです。 ただ、マイメリが「画家が求める色を追及している」という点から考えると納得の色なのかもしれません。



084 カドミウムイエローディープ

蛍光色のように鮮明で強い濃い黄色です。 有毒なことからカドミウム系の色は代替色に切り替わりつつありますが、(WINSOR&NEWTONの水彩などは、カドミウムフリー色が出ていますね)流石カドミウム色。単一顔料でここまで強い発色があるのは魅惑的ですね。

セヌリエのカドミウムイエローディープも同じく単一顔料のPY35で、色味としてもほぼ近いです。

まさに透明水彩絵の具の不透明色の強さ、という感じ。ただ、粒子が細かいのでお水を多くしたり、ぼかしたりしても、薄まった色ではなく、発色が良いままです。




392 ウルトラマリンディープ(PB29)

青といえば、ラピスラズリの青・ウルトラマリンとして、導入セットからは外せない色なのかもしれません。ため息の出るような深い、THE・青。 マイメリブルーではグラニュレーション指定はありませんが、やや粒状化なような気もしました。




180 キナクリドンレーキ(PV19)

マイメリブルーの中で、PV19を使った色はローズレーキ、プライマリーレッドマジェンタもありますが、その中でレッドバイオレットの色合いとしてベーシックな色になると思います。ベルベットのレッドバイオレットのような高貴な深い色をしています。



333 グリーンゴールド(PY129)

黄金の麦畑のような色。濃く溶かすと、茶色のような緑のようなゴールド色が見え、薄く溶かすと透明な緑がほんのり感じられる黄色になる。 マイメリブルーの単色のグラデーション幅の広さを良く感じられる色だと思います。 W&N グリーンゴールドも同じくPY129の単一顔料を使っていて、色味としても近いです。



514 ペインズグレー(Vat Blue1)

マイメリブルーのペインズグレーの顔料は、合成インディゴ。インディゴを用いたペインズグレーは珍しく、独自のカラーだと思います。 例えば他社は、 シュミンケ シュミンケペインズグレー…PR101,PB29,PBk7 シュミンケ ペインズグレーブルーイッシュ…PR255、PB15:6,PB15:2 W&N ペイニーズグレー…PB15,PBk6,PV9 セヌリエ ペインズ・グレー…PV19,PB15:1,PBk7 レンブラント ペイニーズグレー…PBk6,PB15 クサカベ ペインズグレー(濃口鼠)…PBk7,PB15 ホルベイン ペインズグレイ…PBk6,PB15,PV19 PB66も含めてインディゴを顔料にしているところはありません。 他が悪いという意味ではなく、珍しいカラー選択だなと思います。 混色による彩度を落としたい時、黒系で影を塗るには強すぎる時などに重ねても良いですし、単一顔料なので混色しても良い。冷たい青灰色でもないという絶妙なカラーバランスで重宝しそうなグレーです。


”イントロセットは単色で購入するよりお得”と書いてあったので調べてみたところ、 084 カドミウムイエローディープ…2,035円 333 グリーンゴールド…2,035円

514 ペインズグレー…1,595円

180 キナクリドンレーキ…1,760円

392 ウルトラマリンディープ…1,595円 合計金額 9,020円(税込) イントロセットのお値段は、4,400円(税込)


半額近いお値段…! 3色以上気になる色がありましたら、イントロセットを購入した方が断然お得でした。(予想以上でびっくり) 画材販売.jp マイメリブルー イントロセットはこちら


6. 混色による分離色づくりに適した絵具?

SNSで話題の水彩絵の具の分離色絵具。 シュミンケやクサカベなど、いろいろなメーカーさんから出ており、話題になっています。 原理としては、重たい顔料と軽い顔料が混ざった絵具が、お水の流れの中で、重いものが先に沈み、軽いものが遠くにいくから、分離して見える表情のことです。 ・単一顔料だから、混色による色づくりに適している ・顔料の性質を活かした絵具である 以上のことから、マイメリブルーはピグメントを考えながら混色すれば、自分だけの分離色色を作りやすいという特徴があります。 2022年9月24日(土)に、青葉画荘美術部 マイメリブルー透明水彩絵具~分離色を作ってみよう~を開講しますので、よろしければご参加ください。 詳しくは、こちら

7. まとめ いかがでしたでしょうか? 12mlチューブと大きいこともありますが、高級水彩絵具であるマイメリブルーはどんな魅力があるのか、特徴があるのか、少しでも伝わりましたら幸いです。 店頭にて、チューブ、ハーフパン全色お取り扱い中。弊社通販サイト・画材販売.jpでもお取り扱いがありますので、よろしければご利用ください。



【追記】2022.08.03

青葉画荘店舗、または画材販売.jpにて、マイメリブルーシリーズ商品をお買い上げいただいたお客様に、青葉画荘セレクト5色ドットカードをプレゼントいたします。

塗った時に感動する高発色を感じられるキナクリドンレッド、ターコイズコバルト、レアピグメントのインディゴ、他社とは色合いが異なるサップグリーン、1色で分離色のように見えるマルスブラウンを選びました。ぜひ、お試しください。 ※ドットカード配布は2022年8月3日より先着順です。無くなり次第終了いたします。

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