2023年2月18日(土)「青葉画荘美術部 ニッカーデザイナースカラー~不透明水彩絵具で描いてみよう~」を開講しました。 その講座の様子をご紹介します。
【目次】
1. 不透明水彩絵具とは? ー透明水彩絵具との違い ー不透明水彩絵具の使い方
2. ニッカーデザイナースカラーとは?
ーポスターカラー、ガッシュとの違い
3. ニッカーデザイナースカラーで、ぬりえをしてみよう 4. まとめ
ー記事で使用した画材
5. 青葉画荘美術部とは
水彩絵具には、透明水彩絵具と不透明水彩絵具があります。不透明水彩絵具は、色が力強く、幼稚園や小学校低学年で使用したことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
不透明水彩絵具は、下の色を隠すようにどんどん上に重ねながら描くことができます。また、お水の分量によって、透明水彩絵具風の描き方もできる、1本で二役の絵具です。
どんな特徴があるのか、透明水彩絵具と不透明水彩絵具、使い方はどう違うのか塗り絵をしながら不透明水彩絵具の使い方について学び、体験してみましょう。
【1. 不透明水彩絵具とは】
不透明水彩絵具は、下の色を覆い隠すことができる水彩絵具です。
下地の紙の色や、下に塗った絵具の色に影響されることなく、上にどんどん重ねて描くことができます。
まず水彩絵具には、「透明水彩絵具」と「不透明水彩絵具」の2種類があります。
ざっくり説明すると水彩絵具は「顔料(色の元)+アラビアガム(糊分)」でできており、透明水彩絵具と不透明水彩絵具の違いは、アラビアガムの含有量の違いです。
・透明水彩絵具…顔料+アラビアガム(多い)
糊分であるアラビアガムの量が多いため透明性が高く、紙の白色や下に塗った色の影響を受けます。
・不透明水彩絵具…顔料+アラビアガム(少ない)
それに対して、不透明水彩絵具はアラビアガムの量が少なく、ツヤのないマットな質感のものです。紙に透けない為、色の力強さがあります。 また、不透明水彩絵具で描いた画面を触っていただくと少しザラザラします。これは、 アラビアガムの塗膜から顔料が飛び出ている状態の為です。
「ガッシュ」と呼ばれているものは不透明水彩絵具です。 (ちなみに、アクリルガッシュはアクリル樹脂の量が少ない不透明なアクリル絵具のことです)
♦透明水彩絵具(透明色)と不透明水彩絵具を塗り比べてみました
緑色の紙の上に描くと、透明水彩絵具の方は紙の色の影響を受けていますが、不透明水彩絵具は、下の紙の色に打ち勝つように乗っています。
つまり、透明水彩絵具と不透明水彩絵具は、糊分が多いか少ないかで、このような絵具の性質の違いになります。 また、不透明水彩絵具は糊分であるアラビアガムが少ない為、パレットの仕切りに充填して使おうとするとひび割れてしまうので、使うたびにチューブから絞り出すようにしましょう。
色画用紙などに絵具で描く場合は、不透明水彩絵具の方がしっかりと描くことができます。 ※レモンイエローレーキなど、元々の顔料の性質上、被覆力が少し弱い色も中にはあります
また、不透明水彩絵具は、加える水の量を多くすることで、透明水彩絵具のような表現もできる1本で二役の絵具です。
にじみやぼかし、グラデーション技法などを行う場合は、表面強度、保水力とはじきの強さもある程度あった方が描きやすいので、水彩紙に描くのがオススメです。
逆に、水をあまり使わずに、どんどん重ねる描き方をする場合は、高級水彩紙である必要はなく、画用紙などでも発色良く描くことができます。
紙をしめらせ、にじみぼかし描き込みをするポスターカラーでアニメーション背景画を描く現場では、ニューTMKポスター紙が使われています。
不透明水彩絵具はもともと糊分であるアラビアがカムが少ない為、水を多用すると糊分も薄まってしまい定着が弱くなってしまいます。その場合は、水の代わりにアラビアガム水溶液で薄めるのがオススメです。
ニッカーさんでは「ポスターカラー復活剤」の名前で販売しています。
【2. ニッカーデザイナースカラーとは】
「不透明水彩絵具、すぐ濁ってうまく描けなかった…」という経験がある方は、もしかしたら透明なアラビアガムではなくて不純物のあるアラビアガムやデキストリンなどを使用した不透明水彩絵具だったかもしれません。 ニッカーデザイナースカラーは、専門家用透明水彩絵具と同じく透明度の高いアラビアガムを使用しており、顔料のグレードも高い為、濁りの少ない混色が可能です。
ぬるぬるとした筆伸びの良さがあり、カリグラフィーのユーザーさんからも絶大の信頼をおかれています。
不透明水彩絵具の中でも抜群にハイクォリティでありながら手に取りやすい価格帯で、色濃度も高い為、なかなか消費しきらないというユーザーのお財布にもやさしい絵具です。(定価350円/税別)
ポスターカラー、デザイナースカラー、ガッシュは、すべて不透明水彩絵具です。
○ニッカー ポスターカラー
ポスターカラーは、不透明水彩絵具です。 ニッカー ポスターカラーは透明度の高いアラビアガムを使用したハイクラスの不透明水彩絵具です。アニメーション美術背景画の現場では、ニッカーポスターカラーがシェアNo.1だそうです。 ガッシュに比べて、更にややアラビアガムの量が少ない為、被覆力が強く、顔料の色鮮やかさが際立ちます。 <ポスターカラーとデザイナースカラーの違い> ニッカー デザイナースカラーは、ニッカーポスターカラーより更にハイランクな不透明水彩絵具の最高級モデルです。(ポスターカラーのあとに登場した上位互換的位置) ニッカー ポスターカラーに比べて、体質顔料が少なく、アラビアガムの量が若干多い為、筆伸びが良くムラが出にくいという特徴があります。また色も沈みづらく、発色も更に強くなっています。 ポスターカラーは、手書きのポスターやアニメーション背景画など大量消費する商業用の画材として発展し、デザイナースカラーはデザイン作品用として発展していったようなユーザーの用途の違いが、色相などにも表れているのではないかと思います。
他ブランドからも多数「ガッシュ」は出ています。例えば弊社在庫品ですと、ホルベインのガッシュも透明度の高いアラビアガムを使用し選び抜かれた顔料を使用した高品質な不透明水彩絵具です。
ホルベインのガッシュの方は色相が絵画的で、デザイナースカラーは中間色なども多く、ポスターやデザインに汎用性のある色相のラインナップだと思います。 文字やデザインなどのムラの無いフラットな塗りや、薄めずにどんどん上に重ねる描き方をするのであればデザイナースカラー、絵画的に使用するのであれば、ホルベイン ガッシュが良いのかもしれません。 ホルベイン ガッシュは、近年「日本の色」の新色が増え、色のバリエーションが更に広がりました。
【3. ニッカーデザイナースカラーで、ぬりえをしてみよう】
不透明水彩絵具は「水を多用して透明水彩絵具風」に描く描き方もできますが、今回は「不透明色を活かして、どんどん上に重ねていく」描き方をします。
<ポイント1> 加える水は筆伸びが良い程度に留めてシャバシャバにしすぎない。どんどん上に重ねていこう <ポイント2> 塗る順番は、水彩画のセオリー「薄い色から」ではなく、「下の色から」 <ポイント3> 何回も筆でなでると下の色が引っ張られてしまうので、重ねる時は軽く。 でも滲んでしまったら、乾いてから水分量を減らしてもう一回重ねて塗ろう
上記の3つのポイントを踏まえながら、こちらのニッカー デザイナースカラー 6色で塗っていきます。
用紙はアルビレオ水彩紙です。
まず、一番下となる、からだ全体を黄色でフラットに塗ります。 耳の中は黄色と白を1:1くらいで混色したものを塗ります。 多少はみ出ても気にせず、どんどん塗りましょう。 元の線が見えなくても問題ありません。あとで上から描き足します。
青と白を1:1くらいで混色して水色をつくり、服を塗ります。 ボタンや模様が消えても気にせず、どんどん塗りましょう。 はみ出ていた黄色の上にも水色を重ねて塗ります。 この時、何度も筆でなでると、下の黄色がにじんできてしまいます。その為、一旦乾かしてから、もう一度水色を重ねると綺麗に塗ることができます。
今回は水の量を筆伸びが良い程度に抑えて、どんどん上に重ねていく塗り方をします。筆についた水分が多い場合は、ふきんなどでぬぐい取り、やんわり水を含んでいる程度に抑えます。
また、絵の具を筆につける時は、筆の中腹くらいまでに留めておきましょう。
根元までたっぷりとつけると、描いている途中でボタ落ちしてしまったり、洗い不足で絵具が下りてきて混ざったり、筆が根腐れする原因にもなります。
体の黄色が乾いたので、白目の部分を塗ります。 多少はみでても大丈夫です。 模様は、茶色で細い筆を使って描きます。外側から内側に向かって線を短くする(Wi-Fiマークのような感じ)と、それらしくなります。 ついでに鼻と口も描きます。 顎の下は、茶色を水を多めに薄めたもので、逆三角形になるように影をいれます。 模様と同じ濃度だと、ちょっと強すぎるので、薄めた色を使います。
腕の重なりやしっぽの付け根などにも影のラインを入れましょう。
筆伸びが良い程度の少ない水分量にした濃度の高い白で、服のラインとボタンを塗ります。
体の黄色、白目も乾いた頃なので、青で目を塗ります。
少しアイラインも塗るような感じで、細い筆を使って塗ります。
目の色を乾かしている間に、細い筆を使って、黄色と白を混ぜて作ったうす黄色で毛並みを描き足します。 筆先で勢いをつけてしゃっしゃと描きます。 鼻の頭や胸元、光が当たって毛並みが透ける外側のところなどに描き足します。
目の青が乾いたら、青と白を混ぜて作った水色で、目の仲春に点々を描きます。
最後の仕上げに、白で大きい丸と小さい丸を右上にハイライトとして描いて瞳は完成です。
ひげなども同じく白で描いておきます。
ここまでで、完成に近づいてきました。
青を多めの水で薄めて、服の足元の方や、ボタンの下、頭の下などに影を足しました。(参加された皆さんは、白のラインを入れる前に影を入れてもらっています)
地面の葉っぱを塗っていきます。 一番濃い緑色でフラットに塗ります。 線画からはみ出ても気にしないで大丈夫です。ねこの足にかかっても大丈夫。 これがベースになります。
濃い緑色が乾いたら、下中央から外側上方向に向かって、明るい緑色で上から描き足していきます。
筆先を押し付けるようにして絵具を置くと、雫型の筆跡になり、葉っぱのようになります。緑色が多すぎたなと感じた場合は、ベースに塗った濃い緑色を緑色の上から、ポンポンと載せてバランスを整えます。
緑色に白を混ぜて作った黄緑色で、少しハイライトを入れます。
完成です。
参加していただいた皆さんも、きれいに塗れました。
皆さんの手際が良く、少し時間があまった為、水彩絵具風にもみじのグラデーションをしてみたり、ニッカー絵具さんのご厚意でお借りしたデザイナースカラー全色を自由に試していただきました。
【4. まとめ】
いかがでしたでしょうか。
透明水彩絵具と不透明水彩絵具の違い、不透明水彩絵具は下の色や紙の色に負けずに描くことができるという特徴、
それを踏まえて、上にどんどん重ねていく塗り方、お水の分量(またはうすめ液/アラビアガム水溶液)を増やすことで透明水彩絵具風にも描ける塗り方などを、実際に体験していただきました。
修正がきくという点は、初心者の方にも気軽に手に取りやすい絵具ではないかと思います。
ニッカーデザイナースカラーは、単色、セット共に、店頭在庫しております。
また、弊社通販サイト画材販売 .jpでもお取り扱いがあります。
ぜひ、遊んでみてください。
<記事で使用した画材>
【5. 青葉画荘美術部とは】
「やってみたいけど、よくわからないし…」
「いろんな画材やジャンルを試してみたい…」
「画材を揃えるのが大変そう…」
そんな「やってみたい」の気持ちを大切に、青葉画荘スタッフと一緒に挑戦していただこうという、超初心者向け体験型教室が青葉画荘美術部です。
青葉画荘スタッフが部長となり、部員の皆さんをサポートします。
「水彩紙って何?」「油性色鉛筆って何?」 一からではなく、ゼロからスタート。
1回毎で完結する教室なので、気になった回のみ参加できます。気軽に手ぶらで参加できる講座です。
講師の先生は聞きにくい画材についての初歩の事柄も、お気軽にスタッフまでお尋ねください。 美術部室でお喋りしながら、画材に触れるような気持ちで、気軽にご参加いただければと思っています。
次回は、2023年4月8日(土)『水彩紙使い比べ体験会~水彩紙ベストパートナーを探そう~』を開催。
青葉画荘美術部について詳しくはこちら
ニッカー ポスターカラーの特別講座も4月に開催決定!
ポスターカラーで描くアニメーション背景美術トーク&ワークショップが、2023年4月28日、29日に開催いたします。 アニメーション業界の第一線で活躍する美術監督・渡邊洋一さんをお招きして、トークセッションと、ニッカーポスターカラーを使ってアニメーション背景画を描くワークショップを開催いたします。 お申込み、詳しくはこちらをご覧ください。
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